遺言書を作るなら「遺言執行者」まで決めておくべき?役割とメリットについて解説
遺言書を作るなら「遺言執行者」まで決めておくべき?
遺言書を作成するとき、多くの方がまず考えるのは「誰に、どんな種類の財産を残すか」ということでしょう。
自宅は配偶者に、預貯金は子どもたちに、といったように、あらかじめ財産の分け方を決めておくことはもちろん大切ですが、実はもう一つ考えておきたいポイントがあります。
それが、「遺言執行者を誰にするか」です。
遺言書は、作成しただけですべての相続手続きが完了するものではありません。遺言者が亡くなった後には、遺言書に書かれた内容を実際に形にするため、多くの手続きが必要になります。
遺言執行者をあらかじめ決めておくことで、相続が発生した後の手続きを進めやすくなり、トラブルや家族の負担を減らせる可能性があります。
今回は、遺言執行者の役割や、遺言書を作成するときに遺言執行者を選任しておくメリットについて分かりやすく解説します。
遺言書があれば、それだけで相続手続きは終わる?
「遺言書さえ残しておけば、あとは書面通りに財産が配分される」とお考えの方は多くいらっしゃいます。
しかし、実際にはそうではありません。
例えば自宅を長男に相続させるという遺言があったとしても、不動産の登記名義が自動的に長男へ変わるわけではありません。預金についても、遺言書があるだけで自動的に口座のお金が受取人へ送金されるわけではありません。
相続発生後には、それぞれの財産について必要な手続きを行う必要があります。 だからこそ、遺言書を作成するときには、「誰に財産を残すか」だけでなく、「誰がその内容を実行するのか」まで考えておくことが重要です。
遺言執行者の役割について
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために単独で遺産相続に係る手続きを行う強い権限を持つ人のことです。
民法において、遺言執行者には、遺言の内容を実現するために相続財産の管理その他遺言の執行に必要な行為をする権限と義務があると定められています。
遺言は、遺言者の死亡によりその効力が生じることから、遺言者自身はその実現を図ることができません。そのため、遺言者の意思を実現するために、遺言執行を行う者が必要となります。
遺言執行者になれるのはどんな人?
遺言執行者は、一定の欠格事由に該当しない限り、誰でも就任できます。なお、欠格事由についてですが、民法第1009条において以下のように規定されています。
- 未成年者及び破産者は、遺言執行者になれません。
注意点として、未成年又は破産者に該当するかどうかは、遺言書作成時ではなく、あくまで遺言者の死亡時(遺言の効力発生時)となります。
つまり、遺言の効力発生時に未成年や破産者でなければよいことになります。なお、遺言執行者は複数選任することができ、また、法人も遺言執行者となることができます。
実際に遺言執行者になると、
- 財産の調査
- 相続人への通知
- 財産目録の作成
- 金融機関とのやり取り
- 不動産に関する手続き
- 受遺者への財産の引渡し
など、さまざまな対応が必要になります。
また、相続人の一人を遺言執行者に選んだ場合、他の相続人から「公平に手続きしてもらえるのだろうか」と不安を持たれることもあります。不慣れな相続手続きに時間がかかったために完了が遅れたり、そもそも手続き自体を終えることができないという事態も考えられます。
そのため、
- 相続人が多い
- 家族や親族の関係に不安がある
- 相続人が遠方に住んでいる
- 不動産が複数ある
- 財産の種類が多い
- 相続人以外への遺贈がある
- 家族に手続きの負担をかけたくない
といった場合には、司法書士などの専門家を遺言執行者の候補として検討することをお勧めします。
遺言執行者を指定するときに気をつけたい3つのこと
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①公正証書遺言の中ではっきり指定する
誰にお願いする予定かを家族や親族に口頭で伝えているだけでは、遺言執行者を指定したことにはなりません。 遺言書の中で、誰を遺言執行者にするのかが分かるよう、明確に記載しておくことが大切です。
遺言書で遺言執行者を指定するときは、必ず公正証書遺言を作成することをお勧めします。自筆証書遺言に遺言執行者の住所・氏名などを明記しても、遺言書自体の書き方を間違えると、遺言書そのものが無効になる可能性があります。
その点、公正証書遺言は法律の専門家である公証人が作成するため、作成ミスのおそれがなく、法的な有効性も担保されます。なお、遺言書を公正証書にする場合、費用と証人2名が必要になるので、早めに段取りしておきましょう。
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②誰に頼むかをじっくり検討する(司法書士等の専門家や法人への依頼も視野に入れる)
推定相続人や財産も多く分け方が複雑になる場合や、推定相続人同士で対立する可能性がある場合、遺留分に反する遺言書を作成する場合は、司法書士などの専門家に遺言執行者を依頼することをおすすめします。
遺言執行者は証人にもなれるため、当事務所では、遺言書作成の依頼と同時に遺言執行者、証人になるケースが多いです。
遺言執行者が個人の場合、その方が先に亡くなる場合もあることから、10歳以上若い人に頼んだり、複数人に依頼することも検討する必要があります。配偶者を指定しているケースも多く見られますが、年齢が同じぐらいであれば、お子様やお孫さんを指定したほうが良いでしょう。
さらに確実に遺言執行をお願いしたい場合は、法人を遺言執行者にすることも検討する必要があります。当事務所では、司法書士等の専門家が集まって一般社団法人を設立し、法人としても、遺言執行者に就任しております。
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③専門家に依頼する場合は、遺言執行者の報酬も事前に確認しておく
専門家に依頼する場合は報酬が必要となるため、事前に費用の概算を確認しておくことが重要です。 また、遺言書の中に遺言執行者の報酬を明記しておくことで、相続開始後に相続人と揉めることがなくなります。
遺言執行者はどんな手続きができる?
遺言執行者の仕事は、遺言書の内容や財産の種類によって異なります。代表的なものは以下となります。
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相続人へ遺言の内容を知らせる
遺言執行者が任務を開始した場合、遺言の内容を相続人に通知します。遺言書の存在や内容を一部の相続人しか知らない状態では、その後の手続きがスムーズに進まないこともあります。遺言執行者から正式に内容を知らせることで、相続人全員が遺言の内容を把握したうえで手続きを進めやすくなります。
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相続財産を調べて財産目録を作る
遺言執行者は、相続財産を調査し、財産目録を作成して相続人に交付します。不動産、預貯金、有価証券など、遺言者がどのような財産を持っていたのかを整理することは、遺言の内容を正確に実現するうえで欠かせません。
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不動産の名義変更に必要な手続きを進める
相続財産に土地や建物が含まれている場合には、相続登記などの手続きが必要になります。遺言書に不動産を誰に承継させるか書いてあったとしても、それだけで登記名義が変わるわけではありません。遺言の内容によっては、遺言執行者が権利の承継に必要な手続きを進めることができます。
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預貯金の解約・払戻しなどを行う
銀行などの金融機関にある預貯金についても、遺言内容に応じて解約や払戻しなどの手続きが必要になります。相続人がそれぞれ個別に金融機関とやり取りするよりも、遺言執行者が窓口になることで、手続きをまとめやすくなる場合があります。
遺言執行者を決めていなかったらどうなる?
遺言書に遺言執行者の記載がなかったとしても、遺言書そのものが無効になるわけではありません。
遺言の内容によっては、相続人自身で必要な手続きを進めることができます。一方で、遺言執行者が必要となったにもかかわらず指定されていない場合や、就任を断られた、就任後に任務を続けられなくなったなどの事情がある場合には、相続人などの利害関係人が家庭裁判所へ申し立て、遺言執行者を選任してもらうことができます。
ただし、相続が発生してから家庭裁判所へ申立てを行うことになれば、書類の準備や手続きに時間と手間がかかります。そのため、遺言書を作成する時点で、「誰に遺言執行者をお願いするか」まで決めておくことには大きな意味があります。
遺言執行者を決めておくメリットとは?
では、遺言書を作るときに遺言執行者を指定するメリットについて見ていきましょう。
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①遺言書に込めた希望を確実に実現してもらえる
遺言書を残す最大の目的は、自分の死後に、自分の希望に沿って財産を引き継いでもらうことです。
しかし、手続きをする人が決まっていなければ、
- 「銀行の手続きは誰がするの?」
- 「不動産の登記は誰が進める?」
- 「必要書類は誰が集める?」
といったところから相続人同士で相談する必要に迫られることが考えられます。遺言執行者を決めておくことで、このような手間をなくすことができます。
民法1012条と民法第1015条において、遺言執行者は、「遺言の内容を実現するため」に強い権限が明記されています。遺言書を「書いて終わり」にしないためにも、大切なポイントといえるでしょう。
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②残された家族を相続開始後の面倒な手続きから解放し、負担を軽くできる
家族が亡くなった後は、相続手続き以外にも、葬儀や各種届出など多くの対応が発生します。
その中でさらに、
- 必要書類を集める
- 金融機関へ連絡する
- 預金の手続きを行う
- 不動産の登記をする
- 受遺者へ財産を渡す
などといったことを進めるのは、大きな負担になりかねません。
民法第1012条によって、遺言執行者は遺言の実行に関する手続きを単独で進める権限を認められています。高齢者や遠方に住んでいる・仕事や育児で忙しいなどの事情がある相続人がいる場合は、特に有用といえるでしょう。
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③相続人同士の行き違いをあらかじめ防ぐ
遺言執行の手続き等を相続人それぞれに任せるのではなく、遺言執行者に集約して手続きを一本化できることがこの制度の最大のメリットです。
遺言執行者がいる場合、相続人は遺言の執行を妨げるような相続財産の処分などをすることはできません。
遺言書の内容に沿って着実に手続きを進められる体制を作っておくことは、相続人同士の不要な対立を避けることにもつながります。
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④相続人以外に財産を残したい場合も安心
「相続人ではないけれど、お世話になった人に財産を残したい」というケースもあります。法定相続人以外の人に財産を残したい場合、遺贈という選択肢があります。遺贈とは、遺言書で指定することで、相続財産の全部または一部を、法定相続人以外の人に無償で取得させることです。
遺言書によって相続財産を取得させる相手は、法定相続人だけでなく、法定相続人以外の人でもまったく問題ありません。民法第1012条において、遺言で遺言執行者が指定されている場合、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができると定められています。
つまり、遺言執行者を指定すれば、受遺者へ財産を分配する際の手続きは、すべて遺言執行者が行うことになります。法定相続人と受遺者との相続トラブルを回避するという意味合いでも、遺言執行者を決めて遺言書にその旨を記載しておきましょう。
「遺言書を書いて終わり」にしないために
ご相談は司法書士へ
遺言書で大切なのは、形式が整っていることだけではありません。実際に相続が発生したとき、書かれた内容を無理なく実現できる遺言書になっていることが重要です。
特に不動産がある場合には、
- 登記情報と遺言書の内容が一致しているか
- 誰にどの不動産を承継させるのかを明確にしておく
- 不動産を売却し、現金化してから分けることを遺言書に明記しておく
といったことなども事前に考えておく必要があります。
マザーズ法務司法書士事務所では、推定相続人や不動産の調査、財産内容の整理、公正証書遺言の作成サポート、遺言執行者の選定など、遺言書作成に関するご相談に対応しています。
- 「家族に相続手続きの負担をかけたくない」
- 「自宅を誰に残すか決めておきたい」
- 「遺言執行者を誰に頼めばよいか分からない」
- 「相続人ではない人にも財産を残したい」
このようなお悩みがある場合には、遺言書を作成する段階から専門家に相談しておくと安心です。
財産の分け方だけではなく、その後の相続手続きまで見据えて準備しておくことが、ご自身の希望を確実にご家族へつなぐことにつながります。